*十六* もっと笑ってよ

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 乾かすための竿の調達と、追加で縄も買ってこなくてはならなくなった。  あぁ、先ほどの大工さんたちに乾かす竿も作ってもらえばよかったのかと思ったけれど、すでに遅かった。この間、買い物したお店でまた仕入れてこよう。  そんなことをつらつらと考えていると、ラーウスさまが小屋にやってきた。 「壁がないと、こんなに寒いのか」 「えぇ、そうですね。遮る物がないですから」 「ウィケウスの花は寒くても平気なのかい?」 「えぇ。アウリスでも問題なく育ちますから、寒さには丈夫なのかもしれません」  雪が降っていても花を咲かせるくらいだから、寒さにはとても強いのだと思う。 「温度よりも、風通りが重要だと父が申しておりました」 「ふむ。なかなか興味深い。今度、ウィケウスについて論文でも書こうかな」 「え……」  ラーウスさまは植物学者であるから、論文を書いても問題がないけれど、いろいろと支障がないだろうか。 「私が論文を書いたら、ルベルは困る?」  質問に即答できなくて、口ごもっていると、察してくれたらしく、ラーウスさまは苦笑を浮かべた。 「論文を書くのなら、アウリスのことを書かなくてはならないか。それは困るね」 「……すみません、ラーウスさまの研究を邪魔するような……その……」     
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