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言葉を探しているうちに、ラーウスさまはわたしの頭を撫でてきた。また耳でも出てきてしまっているのだろうかと思って慌てて頭の上に手を当てると、ラーウスさまは笑った。
「大丈夫、出てないよ」
「ぅ……」
「論文を書くのはしないけれど、一植物学者として、ウィケウスはなかなか興味深いのだよ。だから、研究はさせてほしいな」
「……それなら、問題ないかと思います」
「心配することはない。研究結果はどこにも発表しないから。私個人の好奇心が刺激されたというか……」
研究熱心で仕事馬鹿なラーウスさまらしい言葉に、わたしは思わず笑ってしまった。
そんなわたしを見たラーウスさまは、なぜか急に赤い顔になった。
「ルベルが笑っているところ、すごくかわいい……!」
「えっ」
「ルベル、もっと笑ってよ」
「そうおっしゃっても……」
騎士団長からきつく言われていることの一つに、勤務中の態度がある。勤務中の私語はもってのほかで、さらには、表情も変えてはならないと言われているのだ。
騎士団長がわたしの普段の仕事ぶりを見たら、怒られそうなことをやっているけれど、それはラーウスさまの意向も大きくあるから、小言で済むとは思うけれど、改めて自分の行動を鑑みると、気安くしすぎのような気がしないでもない、と、今さらながらに思った。
「ルベル、もっと私のために笑ってよ」
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