1255人が本棚に入れています
本棚に追加
*十七* 獣人のこと
◆ ◆
ウィケウスの種を撒いてから、一週間が経った。
予定どおり、ウィケウスは今日の朝、花を咲かせた。花が開く瞬間の弾けるような芳香は寝室にまで届いていた。
ラーウスさまにウィケウスが咲いたことを知らせると、朝食後に、薬草園に赴いてくださった。
ウィケウスの独特の甘い香りが、薬草園全体に広がっていた。
「あぁ、この香りだ」
ウィケウスの畑の前で、ラーウスさまはそう呟いた。
「ルベルからする香りと一緒だ」
「え……」
「いつも甘くていい匂いがすると思っていたけれど、そうか、ウィケウスの花の香りだったのか」
前にラーウスさまは、ウィケウスの花の見た目と香りが好きだとおっしゃっていたのを思い出した。
「ずっと疑問に思っていたんだ。ルベルから、どこかで嗅いだ匂いがしていて、それがなにか思い出せなくて、モヤモヤしていたんだよ」
「毎日、ウィケウスを煎じて飲んでいるから、匂いがするのでしょうか」
もし、そうだったのならば、匂いで獣人とバレてしまうのではないだろうか。
「そういう感じではなくて、ルベルの持ち物からするから、匂いが染みついているのではないのかな」
最初のコメントを投稿しよう!