*十七* 獣人のこと

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 ウィケウスの花の香りは好きなので、タンスの中にポプリを入れているし、ブレスレットにもウィケウスの花を仕込んでいるし、言われてみれば、匂いがしないわけがない。日常的にしている匂いだから、鈍感になっていた。  この匂いがウィケウスだと知る人がいて、獣人と縁が深い植物ということも知っていれば、必然的にバレてしまうということで……。 「匂いから獣人ってばれてしまいそうですね」  と思わず呟けば、ラーウスさまは首を振った。 「その心配は無用だよ」 「え、どうしてですか?」 「まず、ウィケウスの花の匂いを知っている者が少ないし、そしてなにより、獣人がこれを煎じて飲んでいるというのも、知る者は少ない」 「しかし、」  と反論しようとしたところで、一度、口を閉じた。  ラーウスさまは首を傾げて、無言でわたしに続きを促してきたので、意を決して口を開いた。 「知る者が少なくても、もしも、知っている人が獣人を忌み嫌っていて、このことを広げたら……」 「ルベル、今までそんなことはなかったし、私は知ってしまったけれど、だれかに言うつもりはまったくないよ」 「…………」 「ルベルは私のことを疑っているのかい?」 「いえっ、そういうわけではありません!」     
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