1258人が本棚に入れています
本棚に追加
ウィケウスの花の香りは好きなので、タンスの中にポプリを入れているし、ブレスレットにもウィケウスの花を仕込んでいるし、言われてみれば、匂いがしないわけがない。日常的にしている匂いだから、鈍感になっていた。
この匂いがウィケウスだと知る人がいて、獣人と縁が深い植物ということも知っていれば、必然的にバレてしまうということで……。
「匂いから獣人ってばれてしまいそうですね」
と思わず呟けば、ラーウスさまは首を振った。
「その心配は無用だよ」
「え、どうしてですか?」
「まず、ウィケウスの花の匂いを知っている者が少ないし、そしてなにより、獣人がこれを煎じて飲んでいるというのも、知る者は少ない」
「しかし、」
と反論しようとしたところで、一度、口を閉じた。
ラーウスさまは首を傾げて、無言でわたしに続きを促してきたので、意を決して口を開いた。
「知る者が少なくても、もしも、知っている人が獣人を忌み嫌っていて、このことを広げたら……」
「ルベル、今までそんなことはなかったし、私は知ってしまったけれど、だれかに言うつもりはまったくないよ」
「…………」
「ルベルは私のことを疑っているのかい?」
「いえっ、そういうわけではありません!」
最初のコメントを投稿しよう!