*十七* 獣人のこと

3/8
前へ
/211ページ
次へ
 ラーウスさまを疑っているのではなく、秘密というのはいつかどこからか洩れるものだ。そのことを危惧しているのだけれども、それを口にすれば、わたしがラーウスさまを疑っているようで、そう思われるのは嫌だったので、違うという意味を込めて、首を大きく振った。 「ルベル、私はね」  ラーウスさまはそういうと、わたしの手を取った。 「ルベルが獣人でよかったと思っているんだ」 「え……?」 「ルベルも知っていると思うけれど、一部の貴族が獣人を鎖につないで“飼って”いるのを知っている。私はそれを知った時、激しく憤ったんだ」 「ラーウスさま……」 「でも、私はなにもできなかった」 「…………」 「それが悔しくて、悔しくて。だって、獣人は、なにか悪いことをしてきたのかい?」 「いえ」 「見た目が違うというだけで差別されるのは、おかしいと思わないかい?」 「…………」  ラーウスさまがそんなことを考えてくださっているとは思わず、わたしはラーウスさまをじっと見つめた。  目と目が合い、ラーウスさまは苦しそうな笑みを浮かべた。 「意思の疎通ができるし、別に悪いことをしているわけではない。むしろ、私たち人間のほうが悪いことをしているではないか」 「…………」 「だから私は、第三王子という立場を利用して、獣人のためになにかしたいんだ」 「ラーウスさま。そのお気持ちだけで充分です」 「ルベル、気持ちだけではなんの解決にもならないんだよ」     
/211ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1258人が本棚に入れています
本棚に追加