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ラーウスさまを疑っているのではなく、秘密というのはいつかどこからか洩れるものだ。そのことを危惧しているのだけれども、それを口にすれば、わたしがラーウスさまを疑っているようで、そう思われるのは嫌だったので、違うという意味を込めて、首を大きく振った。
「ルベル、私はね」
ラーウスさまはそういうと、わたしの手を取った。
「ルベルが獣人でよかったと思っているんだ」
「え……?」
「ルベルも知っていると思うけれど、一部の貴族が獣人を鎖につないで“飼って”いるのを知っている。私はそれを知った時、激しく憤ったんだ」
「ラーウスさま……」
「でも、私はなにもできなかった」
「…………」
「それが悔しくて、悔しくて。だって、獣人は、なにか悪いことをしてきたのかい?」
「いえ」
「見た目が違うというだけで差別されるのは、おかしいと思わないかい?」
「…………」
ラーウスさまがそんなことを考えてくださっているとは思わず、わたしはラーウスさまをじっと見つめた。
目と目が合い、ラーウスさまは苦しそうな笑みを浮かべた。
「意思の疎通ができるし、別に悪いことをしているわけではない。むしろ、私たち人間のほうが悪いことをしているではないか」
「…………」
「だから私は、第三王子という立場を利用して、獣人のためになにかしたいんだ」
「ラーウスさま。そのお気持ちだけで充分です」
「ルベル、気持ちだけではなんの解決にもならないんだよ」
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