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「……そうですが、そう思っていていただけるだけで、わたしたちは救われます」
ラーウスさまがそう考えてくださっているだけで、本当にわたしたちは幸せだと思う。
「私は自分の身分を利用して、獣人の立場をよくするために、動きたいと思う」
「え……」
「だから、ルベル。キミの助けが必要なんだ」
「わたしがお役に立つのなら、いくらでもお手伝いいたします」
「ルベルならそう言ってくれると思ったよ、ありがとう!」
そう言って、ラーウスさまはわたしをぎゅっと抱きしめてきた。
ラーウスさまからは、いつもの甘い匂いが漂ってきた。その匂いにくらくらしながら、わたしもラーウスさまを抱きしめた。
「ありがとうございます」
「お礼を言うのはこちらだよ。私たちの勝手で獣人に肩身の狭い思いをさせているのだから」
いつ、正体がばれるかとびくびくしながら暮らすよりは、獣人だと知られて、ウィケウスのあの苦いお茶を毎日飲まないで済む生活が送れるのなら、後者を選びたい。
だけど、そう簡単にいくとは思えないのだ。
「私に考えがあるんだ」
ラーウスさまのその言葉に、わたしは思わず顔をひきつらせた。
“いいこと”を考えたとは言わなかったけれど、どうせろくでもない考えなのだろう。
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