*二* ばれてしまった

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 ばれたらマズイから、隠していたんじゃないですか! と言えたらよかったけれど、自分のこれからの境遇を思うと、聞かれるまでもなく、はい、ではあるんだけれども、はい、とも、いいえ、とも答えられない。殿下がどう出てくるのか分からなかったからだ。  無言でいるわたしをどう思ったのか、殿下は綺麗な顔に魅惑的な笑みを浮かべ、口を開いた。 「ねぇ、ルベル。私と契約をしないかい」 「……契約、ですか」  なんでいきなり契約の話が出てくるのだろうか。意味が分からなくて首を傾げていると、殿下は続けた。 「ルベルは私にお見合い話がたくさん来ていて、辟易しているのを知っているよね」 「……はい」 「今ね、そのお断りの手紙をずっと書いていたんだ」 「…………」  殿下、ろくに見ずに断っているでしょう!  わたしは殿下の騎士であると同時に、仕事も手伝っているという立場にあるため、殿下に届く書類には一度、目を通している。だからもちろん、お見合いの書類も一通り、見ている。  国内だけではなく、国外からも、第三王子という身分もあるけれど、さらには見目麗しい上に魔術の腕もよく、国の最上位魔術師の一人でもある殿下の元には毎日、お見合いの申し込みがたくさん舞い込んでくる。もちろん、殿下の元に届く前に王が厳選した上でだけど、殿下はろくに見もせず、すべて断っているのだ。     
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