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それにしても、今まで気がつかなかったというか、他人事として捉えていたから考えたことがなかったんだけど、町外れにひっそりと住むわが家と、オース家が、どうして婚約なんてできたんだろうか。明らかにうちの方が、立場的には下のような気がするのだけど。
まあ、今はいい。
それより、この中にはなにが書かれているのだろうか。
よい知らせではないというのは分かったけれど、封緘の色を見ると、茶色のワックスだったから、不幸なお知らせではないというのは分かった。
もう一度、深呼吸をして、えいやっと勢いで手紙を開いた。
そこには、あまり綺麗ではない字で、
『この度の婚約はなかったことにしてほしい』
と一言。
そして、最後に、カニスのサインが入っているだけの、大変シンプルかつ意味が分からないもの。
……うん。
なかったことにするのは別にいいのよ?
だってわたし、カニスに特に思い入れがあるわけでも、今の今まで忘れているくらいの人物だったし、そもそも婚約していたことさえ忘れているくらいのものだったし。
だけどさ、これ、かなり一方的だし、理由も書かれてないってどういうことなの。
しかも、オース家の家長からのものではなく、カニスからってのも、納得しかねる。
分かんない、ほんっと意味が分かんない!
婚約しているってことを知っているのは、わが家とオース家だけだから、別になかったことにされても、お貴族さまではないから、実害はたぶんないと思う。
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