*一* 婚約破棄

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 それにしても、今まで気がつかなかったというか、他人事として捉えていたから考えたことがなかったんだけど、町外れにひっそりと住むわが家と、オース家が、どうして婚約なんてできたんだろうか。明らかにうちの方が、立場的には下のような気がするのだけど。  まあ、今はいい。  それより、この中にはなにが書かれているのだろうか。  よい知らせではないというのは分かったけれど、封緘の色を見ると、茶色のワックスだったから、不幸なお知らせではないというのは分かった。  もう一度、深呼吸をして、えいやっと勢いで手紙を開いた。  そこには、あまり綺麗ではない字で、 『この度の婚約はなかったことにしてほしい』  と一言。  そして、最後に、カニスのサインが入っているだけの、大変シンプルかつ意味が分からないもの。  ……うん。  なかったことにするのは別にいいのよ?  だってわたし、カニスに特に思い入れがあるわけでも、今の今まで忘れているくらいの人物だったし、そもそも婚約していたことさえ忘れているくらいのものだったし。  だけどさ、これ、かなり一方的だし、理由も書かれてないってどういうことなの。  しかも、オース家の家長からのものではなく、カニスからってのも、納得しかねる。  分かんない、ほんっと意味が分かんない!  婚約しているってことを知っているのは、わが家とオース家だけだから、別になかったことにされても、お貴族さまではないから、実害はたぶんないと思う。     
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