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思うけれど、まったく意味が分からなくて、どういうことか手紙を書こうと引き出しからレターセットを取り出した時点で、ふと気がついたことがあった。
……ちょっと待って。
この手紙が故郷からわたしの元に届いたということは、故郷からこの王都までのルートが封鎖されている訳ではないし、そんな話も聞いたことがない。
それなのに、わたしが頼んでいた荷物が実家から届かない。
いや、頼みもしないのにいつもは届く荷物が届かないから督促したんだけど、それでも届かないって……?
なにかおかしい。
このタイミングで婚約破棄。
届かない荷物。
故郷で……なにか異変が起こっている?
わたしはレターセットとカニスの手紙を一緒に引き出しにしまい込むと、先ほど辞したばかりのラーウス殿下の部屋へと直行した。
◆ ◆
ラーウス殿下の執務室に行くと、殿下はまだ仕事をしていた。さすが仕事馬鹿だ。
「失礼いたします」
と部屋に入れば、ラーウス殿下は綺麗な灰色の大きな瞳をさらに大きく見開き、わたしを見た。
相変わらず、この部屋は薬草の匂いが立ちこめている。そして、殿下からは嗅ぎ慣れた、わたしを魅了する、甘い匂い。ちょっとくらりとしたけれど、お腹に力を入れて、殿下の執務机まで進んだ。
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