*一* 婚約破棄

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「故郷から届くはずの荷物が届かなくて困っているんです」 「荷物?」 「はい。毎月、決まった日に届く荷物が届かないんです」 「ご実家、忙しいんじゃないの?」  祭りがある時期は、確かにそれなりに忙しいけれど、基本はわが家は暇を持て余しているはずだ。  忙しいといっても、荷物一つを送れないくらい忙しいなんてことは、ない。あったとしても、絶対にだれかが荷物をなんとしてでも送ってくれるとわたしは信じている。  それができない、ということは、忙しいという理由ではなく、別の理由で送れないのだ。  なにかが起こっている、としか思えない。 「いえ、忙しくても、荷物が今まで届かなかったことなんてなかったんです」 「忘れているってのは?」 「それもあり得ません」  忘れるなんて、あるわけがない。  だって、その荷物が届かないと、わたしが困るって、家族みんな、分かっているから。  それがされないってことは……。 「なにかが起こっている、んだと思うんです」 「それなら、ルベルが一人で行くのは、危ないよ」 「…………」  危ないってなんですか。  わたし、殿下付きの騎士なんですけれど。     
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