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*二* ばれてしまった
◆ ◆
とそこで、殿下の視線がわたしの顔ではなく、もっと上へ向けられていることに、今になって気がついた。
え、あ、なんか、ヤバい……!
「そういえば、ルベル」
「……はい」
話に夢中になって気がつかなかったけれど、そういえば部屋に帰ってからわたし、ウィケウスの香りを嗅ぎ忘れていた!
「頭から耳、出てるよ」
「……………………」
「ルベル、キミは獣人だったんだね」
マズイ。
ひっじょーにマズイ。
ここまでばれないように慎重に来てたのに!
カニスからの手紙は、わたしにかなりの動揺を与えていたのだと、今になって気がついた。
「そっかー、なるほどねぇ」
殿下はなにを思ったのか、椅子から立ち上がると、わたしの元へと歩いてやってきた。
逃げるなら今! と思ったけれど、殿下はなにか魔法でも使っているのか、わたしの身体は動かなかった。
いや、殿下は魔法は使ってない。使ってないけれど、殿下のらんらんと輝く灰色の瞳と、いつもより甘い、わたしを魅了する匂いのせいで、動けなくなっているということが分かった。
殿下はわたしの正面に立つと、頭の上を優しく撫でてきた。ぞくり、と背中になにか衝撃が走った。
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