*二* ばれてしまった

1/7
前へ
/211ページ
次へ

*二* ばれてしまった

     ◆   ◆  とそこで、殿下の視線がわたしの顔ではなく、もっと上へ向けられていることに、今になって気がついた。  え、あ、なんか、ヤバい……! 「そういえば、ルベル」 「……はい」  話に夢中になって気がつかなかったけれど、そういえば部屋に帰ってからわたし、ウィケウスの香りを嗅ぎ忘れていた! 「頭から耳、出てるよ」 「……………………」 「ルベル、キミは獣人だったんだね」  マズイ。  ひっじょーにマズイ。  ここまでばれないように慎重に来てたのに!  カニスからの手紙は、わたしにかなりの動揺を与えていたのだと、今になって気がついた。 「そっかー、なるほどねぇ」  殿下はなにを思ったのか、椅子から立ち上がると、わたしの元へと歩いてやってきた。  逃げるなら今! と思ったけれど、殿下はなにか魔法でも使っているのか、わたしの身体は動かなかった。  いや、殿下は魔法は使ってない。使ってないけれど、殿下のらんらんと輝く灰色の瞳と、いつもより甘い、わたしを魅了する匂いのせいで、動けなくなっているということが分かった。  殿下はわたしの正面に立つと、頭の上を優しく撫でてきた。ぞくり、と背中になにか衝撃が走った。     
/211ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1254人が本棚に入れています
本棚に追加