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貴族の間では、獣人をペットのように鎖に繋いで飼い、社交界に連れて行くのが流行っているそうだ。獣人自体の数が少ないし、人間社会に紛れるときは、ウィケウスを使って人間と変わらない姿を取っているため、よほどのドジを踏まない限り、ばれることはない。
それがだ。
故郷から届くはずの荷物が届かないばかりに、わたしはその大切なウィケウスを切らしていた。こうして騙し騙し来ていたのだけれども、カニスの手紙に動揺したわたしは、部屋に帰って匂いを嗅ぐということを忘れて、こうして殿下にばれてしまった。
よりによって、殿下の前でばれてしまうなんて!
「ルベル」
「あ、あのっ、殿下!」
殿下はそれはそれは魅力的で今まで見たことがないほどの甘い笑みを浮かべて、わたしを見下ろしていた。
わたしは女性にしては背が高いけれど、それでも、ラーウス殿下はわたしよりも身長が高い。並ぶとこうして見下ろされるくらいには、身長差がある。
「ねぇ、ルベル」
殿下は今まで見たことがないほど、機嫌がよい。
なにこれ。なに、これ。
なにこれ、怖い。
「私は今、いいことを思いついたんだ」
王子の言う“いいこと”は、いつもたいてい、わたしにとって“悪いこと”だ。
今回のことも、絶対に確実に“悪いこと”であることは分かった。
「ルベルは自分が獣人だってこと、ばれたらマズいんだよ、ねぇ?」
それはそれはご機嫌に、ラーウス王子は聞いてきた。
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