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最終話
勇者の明王剣が魔王に迫る。
魔王は鋭く、長い牙で応じる。
秘術による守りが既に無効化され、魔王はいささか焦りを覚えた。
接近戦を得意とする勇者との相性が悪い。
そして頼りになる部下はもう居ない。
ーーこれはまずい。何か手を打たねば。
辺りは鬱蒼と繁った森。
それと民家。
この場を凌げそうなものも見当たらないのであった。
「くらえ! ジャスティス斬!」
「ぬぅぅ、無明の火焔!」
真っ正面から2つの力が衝突する。
行き場を無くした炎が森を焦がし、光の力が理屈は分からないが、周辺を壊した。
「まだこんな力を残していたのか。魔王め!」
「貴様なんぞに我が野望の邪魔はさせぬ!」
天下分け目の大決戦。
世界屈指の力が激突することで、周囲の被害も甚大となる。
ただし、タケルの家を除いては。
神の力をふんだんに悪用した彼らは、完全に平常通りだった。
「タケルー。洗濯しちゃうから、汚れ物あったら出しといてねー」
「オレは大丈夫だ」
ニコラの家事は決まって洗濯からだ。
朝日が樽のなかの水を輝かせ、それが気に入っている。
今日も天気が良いので、期待通りとなっている。
ーーさっさとくたばれ!
ーー貴様こそッ!
タケルは言った。
洗い物は無いと。
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