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だが、あくまでその瞬間までの話で、すぐに彼は体を汚すことになる。
「くけっけくけっけ、死ねぇぇーー!」
「おはようステラ。今日も元気良く……」
「死ねぇしねしねしねしね死ねぇ!!」
「ブモゥブモゥ」
今日も歪みきった笑顔でステラが踊る。
その隣でダイアがブモる。
3人が瞬く間に血塗れとなるが、誰一人慌てたりはしない。
いつも通りすぎて微笑ましくすらあるのだから。
ーーとどめだ。食らえっ!
ーーヌゥ、まだまだ!
「あぁん? 誰かいる。外に誰かいるのかぁぁあ!!」
新しい玩具の気配に、ステラは疾駆した。
そして枝伝いに森を進む。
深い森もものともせずに、超高速で移動したのだ。
すると、荒れ果てた地に、活きの良さそうな男が二人も居るではないか。
ステラの鼻息が荒くなる。
そして唇を舌なめずり。
舌先に鉄の味を感じて、一層心が高揚していく。
「くけっ。騒がしくしちゃあダメだぜ。大声だしたら逃げられちまう。くけっけ。静かに、しずかぁに。近寄ったら、いっぱい刺す。いっぱい、いっぱいにぃぃ」
気配を殺して死角から忍び寄る。
抑えきれない鼻息が異様さを際立たせる。
だが、死闘を繰り広げる獲物たちは、気づくことができない。
一方、勇者と魔王の因縁の対決は、間も無く終わりを迎えようとしていた。
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