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「さぁ、観念しろ魔王! お前の野望もここまでだ!」
「おのれ、おのれ! 人間ごときが、なぜここまでの強さを!」
「この力の源は、正義だ! 正義はいつだって勝つものだ!」
「あってはならん、魔族が人間に破れるなど、あってはならんのだ!」
起死回生の策を求め、魔王が付近を見渡す。
森はすっかり焼けていて身を隠すこともできない。
だが、一人の少女を見つける。
その瞬間に閃いたのだ。
「その正義とやらは、人質をとっても振るえるのか!」
「や、やめろ!」
やめろ、と言ってあげたい。
勇者とは違う意味で。
魔王は制止も聞かずに手を伸ばす。
一人ただずむ人間の女の子へと。
勝利を確信した口がグニャリと歪む。
だが、彼は気づくべきだった。
より凶悪に顔を綻ばせる少女に、警戒心を抱くべきであったのだ。
「クキャァーーッ!」
奇声とともにステラが踊る。
すると、どうだろう。
魔王の腕が、首が、胸が輪切りとなる。
そして勢いを殺すこともなく、地面に崩れた。
魔王として権勢をふるった男の体が、である。
この結果には勇者も唖然とするしかない。
目の前には血塗れの少女が居るだけなのだから。
「……え?」
「くけっ。汚ぇ赤。全然ダメ」
「ええと、お嬢ちゃん。ちょっと聞いていいかい?」
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