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第二話
人里離れた森に彼らは住んでいた。
若い男が一人。
そして若い女が三人。
男には不思議な力が備わっていて、何もかもが常軌を逸していた。
その加護は男だけに留まらない。
女三人も勝るとも劣らない恩恵を受けていた。
「タケル。お昼ご飯が出来たけど?」
「ありがとうニコラ。いただくよ」
広々としたキッチンから柔らかな声が聞こえる。
男にニコラと呼ばれている女からだった。
彼女は顔立ちのはっきりした、笑顔の似合う美女だ。
濃紺色の長い髪を後ろに縛っており、透明感のある白い肌のうなじが際立つ。
背丈は男より若干低いながらも、女性にしては高い方だろう。
体のラインは極端な凹凸はないものの、程よい曲線が他を威圧しない。
「シエラはどこかしら。見かけてないけど」
「さっき外から声が聞こえたぞ。近くにいると思う」
噂をすれば何とやら。
パタパタと小走りする音が窓の向こうから届いた。
足音から察するに子供であろう。
そしてドアが勢い良く開け放たれる。
「ウキョキョキョキョッ! 飯だぁ、飯食わせろぉ!」
「あらシエラ。お帰りなさい」
現れたのは10歳くらいの少女だ。
名をシエラと言う。
彫刻のような端正な顔立ち。
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