第二話

1/3
前へ
/14ページ
次へ

第二話

人里離れた森に彼らは住んでいた。 若い男が一人。 そして若い女が三人。 男には不思議な力が備わっていて、何もかもが常軌を逸していた。 その加護は男だけに留まらない。 女三人も勝るとも劣らない恩恵を受けていた。 「タケル。お昼ご飯が出来たけど?」 「ありがとうニコラ。いただくよ」 広々としたキッチンから柔らかな声が聞こえる。 男にニコラと呼ばれている女からだった。 彼女は顔立ちのはっきりした、笑顔の似合う美女だ。 濃紺色の長い髪を後ろに縛っており、透明感のある白い肌のうなじが際立つ。 背丈は男より若干低いながらも、女性にしては高い方だろう。 体のラインは極端な凹凸はないものの、程よい曲線が他を威圧しない。 「シエラはどこかしら。見かけてないけど」 「さっき外から声が聞こえたぞ。近くにいると思う」 噂をすれば何とやら。 パタパタと小走りする音が窓の向こうから届いた。 足音から察するに子供であろう。 そしてドアが勢い良く開け放たれる。 「ウキョキョキョキョッ! 飯だぁ、飯食わせろぉ!」 「あらシエラ。お帰りなさい」 現れたのは10歳くらいの少女だ。 名をシエラと言う。 彫刻のような端正な顔立ち。     
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加