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第三話
ここで物語を華やかに彩る女性陣について記す。
まずはニコラ。
身分は奴隷。
上手かつ効率的に家事をこなす姿からは、これまでの苦労が偲ばれる。
どのような経緯で彼女を招いたかは謎である。
タケルが転生した当初から彼女は身の回りの世話をし、彼の脳内には予備知識として奴隷である事が書き込まれていたのだ。
現代日本の感覚を維持するタケルは、彼女を自由の身分にしようと試みた。
いわゆる解放奴隷である。
だが、ニコラは固辞した。
なぜなら彼女は自身の手で掴み取りたいから。
己の自由を独力で手に入れる事に尽力しているから。
その手段は唯ひとつ。
主人を暗殺することだ。
このように書くと冷え切った関係のように感じられるが、この場合においては真逆なのだ。
彼女は主人を心から敬い、そして異性としての愛にまで目覚めている。
ではなぜ愛する人を手にかけようとするのか。
それを一言で表すなら性癖である。
彼女の悲願が達成されたとしたら、同時に愛する人も失ってしまう事になる。
それは耐え難い苦痛であり、永遠に苛まれる事は本人も理解している。
そして、そのような苦境に立たされる事が、とても甘美であるとも。
以上の事から、彼女は毒を盛る。
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