はじめの一本

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プロローグ前の過去 いよいよ、俺の救い主はいなくなってしまった。 「何てことだ。赤牛も怪物もない。鷲まで使い切るなんて……」 冷蔵庫を覗き込んで俺は落胆した。 頼みのエナジードリンクが底をついたのだ。 昨日帰宅して、今まで一睡もせずに俺はPCに向かっている。 画面には書きかけの台本が表示されているが、数時間前から行き詰まったままだ。 足元に転がるエナジードリンクの空き缶を数える。 2……4……8……16…… あ、ヤバ、カフェイン致死量イッたかも…… 少し冷静になり、空腹であることに気付く。 一人暮らしの我が家には、今ろくな食べ物がない。 俺は、最寄りのコンビニに向かった。 「有り難うございました」 一日分の栄養が取れるとうたう野菜ジュースとおにぎり、カップスープの入った袋をぶら下げて店を出た途端、 おっと!  何かを踏んづけてバランスを崩しかける。 「あっぶね! 誰だよ、雑誌なんて落としやがって」 拾い上げたそれは漫画雑誌、しかもエロマンガ雑誌だった。 (なんだよ、よりによって!) 俺は、辺りを見回す。 職場からは離れているので、恐らく知り合いはいないと思うが、コンビニの前でこんな物を手にしている所を見られたら、リアルに死活問題となる。 なぜなら俺は教師、しかも名門と言われる女子校の教師なのだから!
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