そのゴリラ凶暴につき

24/24
69人が本棚に入れています
本棚に追加
/199ページ
ミホ達の通う高校への通学路。 今日も俺はこの路を歩いている。しかし、昨日のようにサラリーマンに扮している訳ではない。 エ世界(エロマンガ世界)の監視局について、髪の使いノコ=髪乃塚猪子は、いざという時に頼りになる存在であると言っていた。 果たしてその組織から、今朝、新たな連絡があったのだ。 その内容は、勇者シンイチ=俺を高校のスクールソーシャルワーカー(以下SSW)として、設定することに成功した。ついては、本日よりミホ達の学校に勤務せよ、との事だった。 ご丁寧に俺の有資格者証やIDカードまで作られ、宿に届けられていた。 SSW(スクールソーシャルワーカー)とは、学校において、主に、生徒、保護者、教職員への相談業務に従事する福祉専門職であり、俺が現実世界で勤める英世台女子学園にも配置されている。 (これで、直接ミホ達を調べることが出来る訳か。しかし……) サクッと解決して元の教員生活に戻るどころか、とうとうこっちの世界で働く羽目になってしまった。 「監視局って設定まで作れるのか? そんな力があるなら、今回のトラブルも自分達で解決出来るんじゃないのかよ?」 俺の疑問に対して、髪乃塚はいつもの『シンイチさんったら何言ってるんですか、うふふ』と言う体で答えた。 「前にも言いましたが、監視局は慢性的な人手不足なのですよ。今回のねじ込み設定はこれでも早い方です。それにエロマンガを作るのは我々ではなく、人間です。人間が引き起こすトラブルは人間の方で解決して頂かないと」 何なの、その論理? 「じゃあ、せめて作者自身にやらせろよ。自分の作品なんだから。そいつに責任をとらせるべきだろ?」 「作者が自分の作品に介入することは出来ません。作者自身が関わると健全な創作活動が大いに阻害され、エロマンガ界はさらなる混沌(カオス)に陥るでしょう。同じ理由で編集者などが勇者に選ばれることはありません。また、熱心なエロマンガファンも選定外です。彼らはマニアックすぎる為、逆にトラブルを大きくしてしまいます」 あーもう聞くんじゃ無かった! 兎に角、一刻でも早く終わらせて、現実に戻ったら漢文の小テストを作るんだ俺は! イライラしながら歩いていると、いつの間にか高校の通用口に着いていた。
/199ページ

最初のコメントを投稿しよう!