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「またイチから友人関係を作っていこうか。改めてよろしくな、僕のことはヨータローって呼んでくれ」
そう言って握手を求めてきた。
長身の一貴より拳一つ程背が低い陽太郎は、相棒の一貴同様、キャンパスではイケメンと認知される存在だった。
しかし、どことなく幼い面立ちで笑顔も可愛い反面、シニカルな性格の彼は周囲からは『微妙王子』と呼ばれていた。
「じゃあ行こうかヨータロー」
2時限目は別棟の講義となるまどかが席を立つ。
陽太郎はまどかとも友人だった。同じ履修の時は彼女を迎えに来るのがルーティンになっていた。
「またな」と一貴を一瞥し、陽太郎はまどかの腰に手を回して、エスコートしながら講堂を出て行った。
(やっぱり、恋人同士に見えるよな)
普段の仲の良い様子から、一貴は二人は交際していると思い込んでいた。以前確認したところ双方ともただの親友であると否定し、特にまどかは若干怒気を込めていたので、それ以降は触れてはいない。しかし、一貴は二人が何かの理由で公にしないだけで、そのうち明らかにしてくれると考えていた。
(仲の良い恋人か……)
今の自分と里緒は果たしてどうだろう?
そう考えた途端、気持ちが重くなった。
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