「約束があるんだよね。二人の」

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まだ普段の生活で不安が絶えない状況である。事情が分からない同好会に顔を出すのは、正直勘弁してほしい。一貴が断りを入れようとした時、一人の男子学生が横から顔を出した。 「なんだよ、ナンパか? 体調が悪いんじゃないのかよ、瀧島」 明らかに棘のある物言いに対し、噛みついたのは美祢翔子の方だった。 「先に声を掛けたのは私よ。邪魔しないで、あっち行って」 「な! なんだよ邪魔って!」  「行こう、瀧島くん」 翔子が一貴の手を引く。引きずられるように講堂を出る一貴の背後で「俺だって同じバンドの……」と男が声を上げるのが聞こえた。
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