「約束があるんだよね。二人の」

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「約束があるんだよね。二人の」

私立・中慶大学本校講堂。 「どうした相棒? 本日は一段と冴えない顔してるな」 一限目の講義を終え、一貴がスマホを操作していると、同級生の平川陽太郎(ひらかわようたろう)が長椅子の隣に腰を下ろした。 「夢遊病」 「は? なにそれ?」 「記憶喪失の上に、新たな症状が加わったらしい」 一貴はスマホから目を離さずに答えた。 日中はコンタクトレンズを着用している。その横顔から不機嫌さが滲み出ていた。 陽太郎は「どういう事?」と、一貴を挟んで同じ長椅子に座るまどかに答えを求めた。 彼女から深夜のリビングでの顛末と、今朝その確認した時に、一貴が全く覚えていなかった事を聞くと目を丸くした。 「地震の事も覚えてないのか? 相当ヤバいな。病院に行った方がいいぞ」 「明後日、定期受診だからそこで診てもらうよ。あーあ、難易度高いわこのゲーム」 一貴は、アプリを閉じた。 平川陽太郎とは付属の高等部時代からの友人らしかった。彼の言葉を借りるなら適切な距離を保ちつつ、それでいて強い絆を持つ親友である……ようだ。 事故後の一貴には陽太郎の記憶も残っていなかった。記憶を失ってから初めて顔を合わせた時に、     
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