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紫苑もまた、伯母がデザイナーの一色美里であり、奏助とは従兄妹同士であるために、LuZの中では特別な立場にあった。
そんな彼女達を、他のモデル達は“贔屓されている”と敬遠しがちで、ゆえに亜利紗と紫苑が仲良くなるのは、ある意味自然な成り行きかもしれなかった。
ただし一砥の中では、二人を特別扱いしているつもりはない。
仕事は実力に応じて平等に振っているつもりだった。
そして亜利紗も紫苑も、だからこそLuZに在籍しているのだった。
彼女達もまた、自身のバックボーンを理由に仕事を貰うことを望んでいない。
「ていうか、紫苑飲みすぎ。それ何杯目よ」
「まだ三杯目だよ。亜利紗こそお酒に弱いんだから、あんまり飲み過ぎるんじゃないよ。酔っ払ったあんたをタクシーに乗せて、あのバカでかい屋敷まで運ぶのはもうこりごりだからね」
「あーっ、今ここで、そんな昔の話を持ち出す!?」
じゃれ合う二人を呆れたように見つめ、一砥は「まあ、どっちも飲み過ぎるなよ」とだけ注意してそこから離れた。
一砥がそろそろパーティーの締めの挨拶をしようか、と考えたところで、三時間も遅刻してようやく奏助が現れた。
「お前……遅刻にも程があるだろ」
開口一番叱られて、タキシードに着替えた奏助は「ごめんごめん」と軽く詫びた。
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