第一章 いなくなった猫

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第一章 いなくなった猫

 皆さま、初めまして。我が家のお話を読んでくださる皆さまに御挨拶致します。私はみゆきと申します。深い雪と書いて深雪です。私たち四人家族が住んでいるのは東京の端っこを流れる大きな川の近くの町ですが、緑も多いしのんびりとしていてとても住みやすいところなんですよ。父は働き盛りの勤め人ですからほとんど家を空けていまして実は今回のお話には出てきません。逆に母は専業主婦ですのでいつも家にいて、夜はほぼ毎日一緒にご飯を食べながらテレビを見ています。弟はコウタと言いますが、実は今私がとっても心配しているのはこのコウタのことなのです。弟とは言いましたがコウタは猫です。けれど兄弟のいない一人っ子の私にとっては小さな子供だった頃から一緒に過ごした本当に弟同然の大切な家族なのです。あ、因みに毎晩食事の時間になると大抵はコウタもやってきて隣で夕食を食べます。家族自慢のようで恥ずかしいですが、コウタはとても頭の良い子でこちらが話せばちゃんと答えてくれますし、こちらへ色々な欲求を訴えたりもします。テレビ画面にじっと見入っていることも多いですからきっと人の顔はしっかりと区別できるのでしょうし、日本語もいくらか分かっているのかもしれません。とにかく頭の良い子なんです。でも、困ったことに脱走癖があって今日もまだ帰りません。
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