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美弥子は頼人の方を向いて座りなおすと、せっかく会えたというのに起きないなんて、と、少し口をとがらせながらも頼人の寝顔を見入る。
あの雪の日に会ったときよりも少し大人っぽくなっただろうか、時折悩めるように眉を寄せる顔を見て、美弥子は微笑む。
「このままだと一限目が始まる。美弥子、起こそう」
弥沙がニヤっと笑い、美弥子に言う。
「えっ、私、起こすよ?」
弥沙の隣で弘子が驚いて言ったが、美弥子は「任せて」と柔らかく断ると、持っていたシュシュで髪を後ろで緩めに結んだ。
ゆるく結んだせいで、見えている肩までの髪の毛が、ますます弥沙とそっくりに見える。
「ね」
いたずらっ子のように微笑んで、弥沙に目で合図すると、二人は、頼人の机へと顔を寄せた。
皆が見守る中、静かに椅子を真横につけた美弥子が、ポンポンッと頼人の肩を叩いて、囁く。
「頼人、起きて。時間だよ」
それは美弥子の声ではなく、ほんの少し低い、弥沙の声。
「んん~、弥沙?」
寝ぼけ眼で頼人は隣を確認した。
「授業始まるよ」
「ああ。ありがとう」
今度は前から聞こえた声にお礼を述べ、主を確認すると、弥沙の顔だった。
「あれ・・・?」
頼人は目をこすり、目の前を確認するが、やはり、弥沙の顔。
前の席だから、当たり前だよな、と頼人は納得。
したつもりだった。
「ちゃんと起きろよ」
「えっ?」
弥沙の声が隣から聞こえてくる。
びっくりして、横を向くと、同じ弥沙の顔。
もう一度、前を見ると、もちろん、弥沙の顔。
弥沙が二人・・・?
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