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「じゃあな」
「また明日」
そして、いつもの分かれ道までくると、すっかり機嫌の良くなった優真と弘子に別れをつげ、弥沙と美弥子、そして頼人が歩き出した。
その時だった。
「近くにいる」
最初に異変に気づいたのは、美弥子だった。
「どうした?」
立ち止まったままの美弥子に、頼人は聞く。
「ごめん、頼人、僕達ここで失礼する」
美弥子の代わりに返事をした弥沙は美弥子の腕を取って、頼人に別れを告げたのだが
「気配がするの。私、行かなくちゃ」
呟くように言う美弥子は動こうとはしない。
その言動に弥沙は、ひとつ大きなため息をつくと、美弥子に聞く。
「まずは、情報収集からだ。どの方角だ?」
「西南の方。早くしないと、化けるわ」
「分かった」
弥沙は返事をすると耳を澄ませた。
神経を集中して風を集めるーーー
聞こえてくるのは、人の声。泣き声。
そして・・・
かすかな憎しみの臭い。
「よし、捉えた」
弥沙は目を開けると、美弥子を見つめる。
すると、
美弥子も弥沙を見つめ返した。
しばし見つめ合うと、美弥子が頷いて、弥沙に言った。
「うん。捉えた」
弥沙も頷き返した。
「少し離れたところに。この距離なら射止められるはず。ぼくもすぐに行く。気をつけて」
弥沙が言う。
美弥子が「任せて」と言った、その言葉は、すぐに風に乗って、消えた。
そう、美弥子の身体と共にー
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