4

6/17
前へ
/32ページ
次へ
「・・・見ているだけだからな」 心が温まるような嬉しさを隠しながら、弥沙は頬を染めながら頼人に告げる。 「ああ、分かった」 弥沙が着いて行くことを許可してくれたのが嬉しく、頼人はにっこり笑って返事をした。 そうして少し走っていると、電柱の陰に美弥子の姿を発見した二人は、速度を緩めてゆっくりと彼女に近づいた。 「様子は?」 「今のところ変化なし」 弥沙の質問に、美弥子は振り向かずに答える。 「一応、ここの管轄は粉陣だから、そっちにも風で連絡をしておいた。直にくる」 弥沙の言葉に頼人は驚く。 弥沙と一緒に走ってきた、その中で、電話をしていたような様子は見受けられない。 驚く頼人に気づいた弥沙は、目を合わせて「知らなくていい」と冷たく言う。 無機質な声と目に、なんだかいたたまれない気持ちになった頼人は、目をそらし、美弥子の視線の先を見やる。 その視線の向こうには、小学生だろう、男の子が五人、一人の同じくらいの男の子を囲んでいた。 「お前さぁ、調子乗りすぎなんだよ」 「言っただろ、勇気より目立つなって」 「そうだよ。クラスの中で勇気が一番なんだぞ」 口々に言っては、真ん中の男の子を小突いたり蹴ったりしている。 「なにやってんの?いじめは良くないよ」 そこへ一人の男の子が走ってきてやってきた。 いや、 正確には、頼人たちと反対側の少し離れた影で見ていた男の子が、走ってきたのだった。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加