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「・・・見ているだけだからな」
心が温まるような嬉しさを隠しながら、弥沙は頬を染めながら頼人に告げる。
「ああ、分かった」
弥沙が着いて行くことを許可してくれたのが嬉しく、頼人はにっこり笑って返事をした。
そうして少し走っていると、電柱の陰に美弥子の姿を発見した二人は、速度を緩めてゆっくりと彼女に近づいた。
「様子は?」
「今のところ変化なし」
弥沙の質問に、美弥子は振り向かずに答える。
「一応、ここの管轄は粉陣だから、そっちにも風で連絡をしておいた。直にくる」
弥沙の言葉に頼人は驚く。
弥沙と一緒に走ってきた、その中で、電話をしていたような様子は見受けられない。
驚く頼人に気づいた弥沙は、目を合わせて「知らなくていい」と冷たく言う。
無機質な声と目に、なんだかいたたまれない気持ちになった頼人は、目をそらし、美弥子の視線の先を見やる。
その視線の向こうには、小学生だろう、男の子が五人、一人の同じくらいの男の子を囲んでいた。
「お前さぁ、調子乗りすぎなんだよ」
「言っただろ、勇気より目立つなって」
「そうだよ。クラスの中で勇気が一番なんだぞ」
口々に言っては、真ん中の男の子を小突いたり蹴ったりしている。
「なにやってんの?いじめは良くないよ」
そこへ一人の男の子が走ってきてやってきた。
いや、
正確には、頼人たちと反対側の少し離れた影で見ていた男の子が、走ってきたのだった。
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