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数日後。
「はぁぁぁ」
今日も頼人の溜息は続く。
「もぉ、朝っぱらから、いい加減にしろよぉ。こっちまで辛気臭くなってしまうだろ」
優真が嘆くが、頼人は「ごめん」というだけで、また溜息を吐く。
「まぁ、返事するようになっただけ、前向きとしましょうよ。あぁぁ、なんだかこの雲も頼人の心のようだわ」
と、今にも雨が降りそうな雲を見上げ、弘子はつぶやいた。
「おはよう」
「おはよう」
挨拶をしながら教室に生徒たちが入ってくる。
「ねぇねぇ、聞いた?」
「うん、聞いた、聞いた。転入生でしょ?」
「俺、さっき職員室で見たよ。女だったよ。綺麗な髪だったな」
「そういや紹蔭も一緒だったよな?」
「えぇぇ!どういうことよ?」
「いやー。私の弥沙くんが!」
ところどころで悲鳴のような声も上がっているのは気のせいだろうか。
すると何人かの生徒が優真のところへやってくると、声をかけた。
「ねぇねぇ、菅原君、転入生くるんだって?」
「あ、あぁ、そういや。そんなこと言っていたな」
「どこのクラス?ここ?」
「男の子?女の子?」
理事長の息子だけあって、情報を持っているだろうと踏んだクラスメイトたちは、なんとか聞き出そうと、優真を質問責めする。
「ああ。このクラスにくるみたいだよ」
優真が言うと、キャーだのワーだの、と皆が騒ぐ。
「さっき、紹蔭も一緒に見たってやつかいたんだけど、どういう関係?」
座っていない弥沙の席を見ながら聞いた男子に、
「あぁ、それは・・・」
と、優真が答えようとしたとき、
キーンコーンカーンコーン
ちょうどチャイムが鳴って、弥沙が滑り込むように入ってきた。
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