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1. おかあしゃん
ぼくはパンダ。
たくさん竹が生えているところで、ぼくは生まれた。おかあしゃんのおっぱいをたくさん飲んで大きくなったんだ。
寝っころがっておかあしゃんと遊ぶのがいつも楽しかった。寝っころがると、おかあしゃんの大きな優しい顔がすぐ近くにあった。その向こうに綺麗な緑色の竹がたくさん生えていた。
この竹いっぱいの林がぼくとおかあしゃんのお家だ。
「ぼくはこの竹から生まれたの?」
そうおかあしゃんに聞いてみると、おかあしゃんが初めて「お父さんはね……」と口にした。おとうしゃんってなあに? と訊ねたら、ぼくはおかあしゃんとおとうしゃんの二人から生まれたと教えてくれた。
「じゃあ、おとうしゃんはどこに行ったの?」
そう訪ねると、おかあしゃんは上を指差した。
「お空の上のほうにお父さんはいるのよ。私たちを見守ってくれているのよ」
おかあしゃんはそう言った。
「あ、竹に登ってるのかぁ」
ぼくがそう言うと、ふふふ、とおかあしゃんはぼくを抱き締めたんだ。
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