ナマケモノ

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 バール星人は狩猟民族である。方々の星に出むいては、その星で必要な物資や食料を手に入れていた。とはいえ、彼らは宇宙船を有するほどの宇宙人である。粗暴に星に乗り込んでは、無闇にその星の生き物や資源を獲ったりはしない。彼らは礼儀というのを大切にしており、狩りが出来そうな星を発見したら第一に、その星の支配者に狩猟の許可をもらうようにしていた。許可が下りなければ、諦めて他の星に行くようにする。獲りすぎず、適度な数を残していく。それが狩猟をする者の大原則であった。それは、支配者がいない無人の星でも同じことだった。  今回、彼らが発見した星は後者に当たる星だった。安定した気候に、水も大気も存在していた。唯一、違うことがあるとすれば、この星に支配者と呼べる者がいなかったことだろうか。星を周回して集落を探したが、どこもかしも森や山、砂漠があるだけで人が住んでいそうな集落はない。  その代わり、幾つか人が住んでいたと思われる遺跡は発見した。かつて、この星にも人はいたらしい。ただ、どの建物も倒壊しており原型を留めているのは僅かだった。 「この星に住んでいた人達はどこに消えたのか」  ふと、そんな疑問を口にするもすぐに忘れるようにしていた。星から支配者たる者が消え去っていることはよくあることだからだ。あまりにも高度に発展した文明は危うさを持ち合わせており、戦争や人口の急激な増加により文明が崩壊した星はいくつも見ていた。  この星の支配者が消えてしまったことよりも、警戒すべきことはその支配者が残した兵器の残骸に気をつけるべきだ。少し前の星で放置されていた爆弾を爆発させてしまい、多数の負傷者を出してしまった。  彼らが考古学者ではない。自分達が生きるのに必要な糧を探すのが仕事なのだ。支配者がいないというのはむしろ都合がいいことと考えるべきだった。  バール星人は宇宙船を地上に着陸させると、さっそく狩りを始めた。野生動物達は見たことない来訪者に驚き、逃げ回った。逃げたところで、すぐに追いつかれてしまうのだが。  幸い、この星には危険な動物はいなかった。肉食動物もいくつかいたが、光線銃を持つ彼らの敵ではない。光線銃には殺傷能力はなく一時的に眠らせるだけである。眠らせたあと、電子檻に閉じ込め検査を行う。病気、毒性の有無や全体の個数のどれぐらいなのかを。
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