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病気や個数に問題がないことを確認すると改めて、命を奪う。その際も苦しめることなく電流を少しずつ流して眠るように。これも彼らなりの礼儀であった。
こうして、バール星人はこの星の動物や植物をいくらか確保して、それらを宇宙船に運び入れた。その頃には宇宙船が着陸した周囲からは動物は消えていた。宇宙人を恐れて動物達はどこに逃げ去ったのだろう。あとで、追い掛けるにしてもそれは翌日以降になる。まずは、周囲の探索と安全の確保が最優先にされることだった。
「おい。さっきから、あの動物だけ逃げていないぞ」
痩せ形のバール星人が上を見て言った。彼につられて他の人も上を見ると、木の枝に爪を器用に引っ掛けてぶら下がっている全身毛だらけの動物がジッと彼らの方を見ていた。猿にも似た動物ではあるが、どこか少し違う。
試しに光線銃を向けて威嚇してみたが全く動じない。さっきから散々、光線銃の威力は見せつけてきた。逃げるか何かしらの反応を示してもいいはずなのに、その動物はユラユラと木を揺らしているだけだった。
「なんだ?あの動物は」
「あれはナマケモノという動物らしい。他の星で似たような動物を見たことがある」
全く同じ生き物とは言えないが、バール星人が以前、狩りをした星の住民が譲ってくれた動物図鑑にそのような動物のことが記録されていた。
「ほとんど、動くことが内動物で、あのように一日中、木にぶら下がっているのだと。食事は葉っぱを数枚食べるぐらいで十分らしい」
「ずいぶんと低燃費な生き物なんだな。よくも、今まで生存競争の中で生き残れたものだ」
痩せ形の彼は感心したように言った。奇跡的にこの過酷な生存競争の中で生き残ったナマケモノ。さすがに狩るのは忍びなく、光線銃を収めた。それに、普段はあまり動かない生き物。木にぶら下がったまま、何時間も同じ体勢をとり続けている。きっと、その肉質は硬いのだろう。さすがに口には合わなさそうだ。
ナマケモノは「キッキッ」と声を発して、木を少し揺らすと彼らの方をジッと見つめ続けた。彼らの方もナマケモノをジッと見ていた。今まで狩りという忙しい毎日を送っていた彼らとは対照的な、その生き物に癒やしのようなものを感じていた。
「おい。いつまで、ボーっとしているんだ」
周囲の見回りを終えて戻ってきた仲間に声を掛けられ、彼らはハッとした。
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