ナマケモノ

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 いけない。ついつい、ナマケモノに魅入ってしまっていた。  正気を取り戻した彼らは野営地を建設する為、宇宙船から機材を降ろし作業を再開した。  その日の夜は、ちょっとした宴会になった。予定していたより多くの獲物を捕獲することができた。明日は、動物達を処理して保存食や必要な物資にしなければならない。同時に資源を集め、次の星までに道具に加工しなくては。やることはまだまだたくさんある。  宇宙船から運び出した食料と僅かな嗜好品である酒を口にしながら初日の成功を彼らは祝った。 「おや?あいつは」  気が付くと、宴会場にさっきのナマケモノが近寄ってきた。ゆっくりとした動きで宴会場に入り込むと、彼らが一纏めにしておいた空になった酒瓶に口を近付けペロペロと舐めているではないか。 「ナマケモノって酒でも飲むのか?」 「さあ。本にはそんなことは書かれていなかったけれど」  この星、特有のナマケモノなのだろうか。それとも、彼らのマネをして酒でも飲もうとしたのか。なんにせよ、ナマケモノは酒瓶に口に残っていた酒を少し舐めただけで顔を真っ赤にして楽しそうの手を頭の上でパンパンと叩いていた。  実にユニークな動きをするナマケモノを見てはバール星人は言葉が通じるているかも知らずに、 「いいぞ。もっとやれ!」 と、煽ったりもした。  動きが遅いと言われているのにも関わらず、ナマケモノはその時ばかりは上機嫌にクルクルと回ってみせたり、踊ったりしていた。 「面白い奴らだな」  彼らはナマケモノを見て面白そうに言う。少しの間、ナマケモノを娯楽代わりに眺めていると森の方から数匹ほどナマケモノがゆっくりとやってきた。酒に酔って踊るナマケモノにつられてやってきたのだろうか。端から見ているだけでも楽しいから、つられてやってきても不思議ではない。  ただ、あとからやってきたナマケモノ達はその手に奇妙な果物を持っていた。レモンやパパイヤに似た形をしたしたそれを持っていたナマケモノ達は彼らにそれを差し出す。仲間と思っているのか。それとも、酒をくれたお礼でもしたいのか。  果物にも似たそれからは実に芳醇な香りがしていた。その臭いは酒にも似ていた。もっとも、その香りはさっきまで彼らが酒盛りしていた酒よりも数段、上等な香りがする。 「ずいぶんと良い香りがするな」
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