ナマケモノ

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「ちょっと、待ってろ。野生の果物には毒があるかもしれない」  その果物が安全であるかどうか、まず分析をしてみないことには。変な果物を食べて身体を壊しでもしたら大変である。簡易検査器を使い、果物の毒性や成分を調べてみる。果肉は非常に柔らかく、手で揉んだだけで簡単に実は解れ、果汁が溢れでてきた。その果汁からは、実のままで嗅いだ時よりもさらに良い香りがする。  検査器で調べた結果、毒はなしと判断された。果肉や果汁も肌に触れが特におかしなことは起きてはいない。 「食べても問題はなさそうだ」  その一言にワッと彼らはナマケモノが持っていた果物に飛びついた。香りが酒のようだと思っていたが、味は本当に果汁酒でも飲んでいるかのようだった。  自然に発酵したのか適度な甘さと香り、それに僅かなアルコールが含まれていた。酒は和を乱すため、あまり宇宙船には積めない。僅かな酒はこのような宴会の時にしか飲めない。そんな中で現地の動物より差し出された酒にも似た果物。それは非常に嬉しいプレゼントだった。彼らはナマケモノと一緒になって一晩を明かした。船に積んできた保存食を予定より多く開けることになったが、そんなのは些細なこと。今は目の前の果物を食べながら、保存食を食べることが何よりも楽しかった。  宴会は夜遅くまで続き、バール星人は自分達がいつ寝たのか全く覚えていないほどだった。  翌日、予定より遅い時間に目を覚ました痩せ形のバール星人。昨日の夜は数ヶ月ぶりに大盛り上がりになった。今日の予定も忘れて飲み食いしてしまうほどに。 「あいたたた」  果物に含まれているアルコールの量は僅かとはいえやはり、飲み過ぎたらしい。目が覚めてすぐに感じたのは軽い頭痛と倦怠感だった。身体を起こそうとするも、怠く力が出ない。昨晩は一緒に飲み食いしたナマケモノといえば、すっかりが酔いが冷めたのか木の上に戻って、昨日と同じように木にぶら下がって動こうとしない。  バール星人は動こうとしたが、中々身体を動かせなかった。そして、誰が言ったか知らないが今日の狩りは中止になることが自然と決まった。頭痛と倦怠感で身体が動かせないのだから仕方ない。ちゃんと、酔いを覚ましてから狩りをしよう。慌てて狩りをする必要はない。身体をほとんど動かさず、彼らは昨日の宴会の残りを少し食べただけで、その日は眠ってしまった。
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