現実はこんなもの

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 それから走って走って、誰も居ない非常階段の踊り場で、止まった。  かわいい、なんて言いなれてないから、あれがお世辞だってわかっていても、反応してしまう自分が悔しい。 まして私は彼より年上の2年で、一年の彼が本気になることなんてありえないのに。 「うーーー! さあ、仕事よ!」  そう自分に言い聞かせて止まった足をまた動かした。  声をかけてきたさっきの彼は、1年の秋月拓翔。 人気投票で生徒会に入った子だから、モテて当然。 顔は言うまでもなくスタイルだってモデル並みーー、の割には少し細いかもしれないが、スーパー高校生といっても過言ではないだろう。 噂ではこっそりモデルの仕事もしてる、なんて聞いたこともある。 対して私はというと、分厚い眼鏡に真っ黒なストレートすぎる髪は後ろでひとくくり。 誰がどう見ても美少女には程遠いし、かわいいなんて言われるような生き物でもない自覚はある。  彼が真面目すぎる私をからかって、楽しんでるのは明白だ。
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