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「密」
不意打ちのように名前を呼ばれてドキリとなる。
「そう呼んでも構わないだろうか?」
「あ……はい!井坂さんの好きに呼んで頂いて大丈夫です」
間を置いて続いた言葉に反応が遅れてしまい、慌てて頷いた。
気のせいか、顔が少し熱い気がする。
密と、下の名前で呼ばれるのは随分と久しぶりだった。
「ありがとう。俺のことも郁也と呼んで欲しい」
それには返事に困ってしまった。
流石に、知り合って間もない目上の人を下の名前で呼ぶことは躊躇われた。
すると、眉を下げる井坂さんに気づいて慌てる。
なんだかとても悪いことをしている気分だ。
「だめだろうか?」
「だ、だめじゃないです!」
咄嗟に首を振って否定すれば、井坂さんは「良かった」と安心したように呟く。
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