雨が止む

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   二学期が終わり、通知表を見ながらため息をついて自分の家に帰った。  玄関に入ると父親の靴があり、今日は彼が休みだったことを思い出し、もしかしたら一緒に遊べるかも? と思った次の瞬間だった。  がしゃん! 大きな音が鳴る。それから、父親の怒鳴り声がした。  僕は急いでリビングへの扉を開けた。  すぐに、床に座りこみ泣く母の肩を掴み、激しく揺さぶりながら大声を出す父の姿だ見えた。  なにを叫んでいたのか分からない。  仕事へのストレスがたまっていたのかもしれない。  もっと他のことに怒っていたのかもしれない。  そんなことよりも、頭から血を流す母とその隣に転がる割れた花瓶が目に入り、一瞬で頭に血が上った。  同時に、尋常じゃない恐怖に襲われた。  なにがあったのか分からない。お母さんが泣いてる。怖い。どうして。どうしよう。  大きな声を出し続ける父親が違う生き物、怪物のように思えた。  やめて、離して、お母さんから離れて! 頭でいくらそう叫んでも仕方がないことは分かっていたのに、どうしても言葉にならなかった。  動くこともできずに震えながら立っていると、ふと父親のような物がこっちを見てきた。  目は充血していて、明らかにお酒を飲んでいた。  怪物は低い声であっちに行っていろと言うと、また母親に向き直る。  僕はお母さんの顔を見ることができなかった。  言われるがまま泣き出しそうな足を動かして、二階の自分の部屋に駆け上がった。  それからすぐ父親の怒鳴り声はぴたりとやみ、静かになった。  自分の椅子に固く縮こまっていた僕は、それに安心するよりも、一気に不安が押し寄せてきたのを感じていた。  どうしよう、お母さん血が出ていた、花瓶をぶつけられたのかもしれない、痛いんじゃないかな、死んじゃったらどうしよう。
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