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ふゆ子さんは、びっくりして声が出ません。羽のストラップを受け取ると、じーっと女の子を見つめました。女の子は、少し困ったように首をかしげました。
「えっと、じゃあ、あっちでお父さんとお母さんとお兄ちゃんが待ってるから、行くね」
女の子は巾着袋の口をきゅっとしぼると、行きかけて、何か思いついたようにぴたっと止まりました。
「あ、それと、『またな』だって!」
そして、ふゆ子さんの巾着袋を持ったまま、走って行ってしまいました。そのまま人混みにまぎれて、もうどこに行ったかわかりません。家族の姿も見えませんでした。
口を開けたまま女の子が走っていった方をぼんやり見ていると、
「どうしたの?」
と、後ろからハルくんが声をかけました。そしてふゆ子さんがにぎっているストラップを見て、
「あれ、きれいだね。それどうしたの?」と言いました。
「あ、うん、もらったの。えっと……友達に」
「今会ったの? 偶然だね」
「うん……そうだね。ほんと偶然」
「次、何に乗ろうか?」
「ん? うーん、あれ。あの、ブランコがぐるぐるまわるやつ」
「よし、じゃあ行こう」
ふゆ子さんは、歩き出すハルくんの背中を見ながら、考えました。
また、かぁ……
そしてなんだかうれしくなって、ふふふ、と笑いました。
おしまい
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