ふゆ子さん、キツネのお医者さんに薬をもらう

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 信号が青になり、トラックはガスを吹きながら行ってしまいました。動物たちは横断歩道を渡って、まっすぐに向かいの建物に入って行きます。  そこは赤いレンガづくりのケーキ屋でした。庭はバラやヒナゲシ、カスミソウなど色とりどりの花でいっぱいで、とてもきれいです。ふゆ子さんはここのチーズケーキが大好きでした。 「大変!」  ふゆ子さんはあわてて後を追いました。だって、食べ物を売る店にあんなにたくさん動物たちが入って行ったら、お店の人もお客さんも困ることでしょう。何かできることがあればお手伝いしよう。  ふゆ子さんはそう考えて、急いで門の前に自転車をとめました。そして、最後の白い鳥に続いてドアをくぐると…… 「あれ?」  変です。いつもは、お菓子の甘いいい香りがするのに、今日は消毒液みたいなにおいがするのです。  それに、ショーケースがあるはずの場所には受付があって、マスクをつけたキツネがうつむいて何か書いています。  焼き菓子でいっぱいの棚はなくなっていて、その代わりに長いすが置いてあります。  長いすにはいろいろな動物が座っていました。イヌ、ゾウ、トラ、ウサギ……あっちの小さないすに座っているのは、オコジョです。キリンは首に包帯を巻いています。ウシは、かわいそうに、おっぱいが赤くはれあがっています。  ここはいつものケーキ屋ではなく、まるで病院のようでした。 「あれえ?」  ふゆ子さんがただただびっくりしていると、先に入った動物たちが次々に受付を終わらせて、ふゆ子さんの番になりました。受付の、マスクをつけたキツネが顔を上げて「コン?」と言いました。
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