ふゆ子さん、タヌキの薬につかる

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 本屋に戻る途中ネコの親子を見かけましたが、子ネコたちは乳母車には乗っておらず、お母さんネコの近くでじゃれあっていました。  「ごくろうさん」  店に戻ると、店長が棚にハタキをかけていました。 「あれ、ケーキ買ってきたの?」  店長はうれしそうです。  ふゆ子さんはまだぼうっとしていましたが、パチパチとまばたきをすると、ケーキの箱を少し持ち上げました。 「あっ……はい。おやつに食べましょう」  まだお昼前です。  おかしいなぁ……夢でも見てたのかなぁ……  ふゆ子さんは首をかしげながら、ケーキを冷蔵庫にしまいました。  どうしても夢だとは思えませんでした。だってその日以来、バッグに入れて持ち歩いていた巾着袋がないのです。  ふゆ子さんは、西川医院にも行ってみました。 「あのう……」 「どうされました?」  目の細くて若い女性の看護師が、受付に出てきました。もちろん、人間の看護師です。 「あの、西川先生は、そのう……木曜日はどちらへ?」 「木曜日は、医院はお休みですよ」 「はあ、はい、そうですよね……」  看護師の名札を見ると、「つねき こんこ」と書かれていました。 「何か?」 「あっ、いえ、失礼しました!」  ふゆ子さんは、あわてて帰りました。
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