モグラにつかまったふゆ子さん

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モグラにつかまったふゆ子さん

 西川医院は、ふゆ子さんの家から、働いている本屋まで通う途中にあります。毎日通っている道です。けれど、なんだか変なのです。よく知っている道なのに、知らない道みたいです。  まず車を運転しているのも、歩いているのも、みんな動物です。人間みたいにきちんと服を着ています。通りかかった幼稚園の園児たちも、子ブタや子ヒツジや子ネコでした。おまわりさんはもちろん、犬です。  よく知っているお店も、様子が少し違っています。いつもおじいさんがひとりで作業をしているたたみ屋から、シマウマの女の子が花束を持って出てきたりするのです。 「なんか、変だなあ……」  様子はちがっていましたが、道は正しいようです。いつも通りすぎる芝生公園にさしかかりました。 「この公園をつっきると、近道だよ」  ふゆ子さんはそう言うと、キッとブレーキをかけて、公園の中に入りました。本当は芝生の上を自転車で走ったりすると管理人さんに叱られてしまうのですが、今はそんなこと言っていられません。 「急いでるんだから大目に見てもらわなくちゃ」 自転車をぐんぐんこいで、もう少しで出口というところまで来ると、急に地面がでこぼこになりました。 「わ、わ、わ」     
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