れおなの旅立ち

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れおなの旅立ち

 外見はどう見ても床屋さんの、公民館にはすぐに着きました。着いたと同時に、れおなはまたバサバサとかごから飛び立って、窓から中に入っていきます。 「待って、待って」  ふゆ子さんが急いで自転車をとめていると、中から「コラッ!!」という、大きな声が聞こえました。  あわてて中に入って、ふゆ子さんはギョッとしました。小さな床屋さんに入ったはずなのに、中は広いロビーになっているのです。正面には石づくりの大きな階段があって、ホールの入口につづいているようです。  ロビーには黒い革のソファが四列並んでいて、りんごの入ったかごをもったアライグマのおばあさんと、腕にギプスをしている人間の男の人がひとり、座っていました。ふゆ子さんは久しぶりに人の姿を見たのでちょっとおどろきましたが、よく見ると鼻がタヌキでした。  大声は、ソファのすぐそばの会議室から聞こえてきたようで、ふたりともびっくりした様子でドアをうかがっています。 「診察室に窓から入って来るとは何事か! おとなしく順番を待っていなさい!」  会議室のドアがバン! と音を立てて開くと、追い立てられるようにれおなが飛んで出てきました。 「ほら、怒られた」     
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