六曜・九曜登場

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六曜・九曜登場

「誰っ?」 物音がした。咄嗟に振り向くモナとリザ。 「誰かと思えば、落ちこぼれ魔法使いではないか。」 草陰から現れたのは、受験生の1組。巫術士コンビの六曜(弟・13才)と九曜(姉・15才)だった。 「あら、奇遇ですね。こんなに早くお目にかかるとは思いませんでした。」 「…そう言えば、リザが組んでたか。…ふむ。相談があるのじゃが…」 九曜がリザに向かって話しかけた。 「ちょっと待ったぁ!」 イヤな予感がする。リザは叫んだモナの様子をそろりと見る。 「アレイスター・クロウリーの…!」 「はい、ストップ。」 あの妙な名乗りをあげるモナの口をリザは塞ぐ。 「恥ずかしいから止めて。あと、九曜も六曜も巫術使うから生まれ変わりがハッタリだってすぐバレるからね。」 「なんだか苦労してるな。」 六曜が同情する視線をリザに向ける。 「どーいうイミよっ! て言うか、試験中に相談ってなに考えてんの!?」 リザの手をふりほどいたモナがビシリと決める。そこから相手を指差しちゃダメって言われてるでしょ、と、リザに注意をされるまでが1セット。 「我らは巫術の他に易も使うのだが…」 このまま話して良いものか、と、迷いながら六曜が言った。 「易… 占術の一つですね?」 「うむ。知っているなら話は早い。我と姉上で『あるもの』について視てみたのだ。」 「えっ? それで見つかったの?」 興味津々にモナが問う。 「いや、それが…」 どうにも六曜は歯切れの悪い話し方をする。 「なになに? 六曜ってば、そんな話し方しないよね! いつも。」 「…。われから話そう。」 それまで黙って様子を見ていた九曜が口を開いた。 「姉上…」 「よい。初めは六曜が易を行った。目的は言うまでもなく、『あるもの』の特定じゃ。だが、何度視ても不吉な答えしか出ぬので、われも占ってみた。…結果は同じであったのじゃ。」 九曜も六曜も、深刻な表情をしていた。 「それってどう言うこと?」 「…全てが過ちと出る。そして少人数での行動は凶と言う結果が出たのじゃ。それで、合流できる者を探しておったのじゃ。」 「今回の試験には、何かイレギュラーがある、と言う事でしょうか…」 九曜の説明を聞き、リザが考え込む。 「どうだろうか、我らと行動を共にしてくれんか?」 「騙されるもんですかー!」 モナが叫ぶ。 「だっ、騙すとは?」 「今回の試験は基本何でもありだし、目的果たしてじゃあバイバイってのもアリだし、そうじゃないって証拠はどこにもないじゃん?」 「まあ、モナにしては鋭いところを突いてるんだけど…」 リザは考え込む。 「…今の褒めてるの? なんで考え込むの?」 「本当に、易で出た結果なんですよね?」 「間違いはない。」 リザの問いに六曜は力強く頷く。その様を見て、 「モナ、少なくとも易の結果を欺くことはないと思うわ。だってそれはこの方達の生業なんですもの。それをやって信用を無くしたら、試験に合格する意味がないのよ。」 と、リザはモナに説明する。九曜と六曜は仙術の大家の直系である。 「…。じゃあ、リザはこの2人と行動するの?」 「そうね。ちょっと、全てが過ちって言うところが気になるし…」 「そうか、ありがとう。」 「えっ? 試験どうなるの?」 「それはその時じゃな。そもそも試験をしている場合かどうかも分からんのじゃ。」 「結構深刻なんですね。」 「正直、こんな結果が出たことはないのだ。よろしく頼むよ。モナ、リザ。」 不安を背負いつつも、爽やかに挨拶をする六曜。よろしく、と、さらりと流す九曜。 「では、休戦と言うことで。よろしくお願いします。」 「リザがそう言うなら… よろしくね、2人とも。」 開始早々、協力関係となった九曜・六曜組。果たして、易の結果は何を意味するのか。  試験とは別の緊張が一行を襲う。 「あっ、リザ! これもおいしーよ!」 その緊張感を早速ぶち壊すモナ。そんな調子の、相変わらずのマイペースぶりを一人貫く彼女に明日はあるのか。 「苦労しておるな。」 「そんな可哀想なものを見るような目で見ないでください…」 「悪かった。」 モナを遠巻きに見守る3人。  とにかくまずは仲間を探しなかなら状況を確認、ということにして4人は注意深く辺りを探索する。特に危険なことはなく、1日目が終わりを迎える頃合いになった。  夕闇が迫る前。野営の準備をし、翌日以降の計画を練ると結界をモナが張り、そこで皆で休むことにする。
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