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ケンカに巻き込まんといて
「なんか騒がしいな。」
易の結果により、共同戦線を張ることになった、モナ・リザ、九曜・六曜、芍薬・牡丹の3組6名。実技試験2日目午後である。
取り敢えず先に進んでみよう、と言うことになって次の野営にちょうど良さそうな場所を探していた時であった。
どうにも行く手から争う音が聞こえてくる。
「行ってみよー!」
「「「「「えっ?」」」」」
出来れば厄介事など避けて通りたいところだと言うのに、止める間もなくモナがそちらに向かう。
「…なんか、ごめんなさい。」
リザがぽつりと。
「取り敢えず、後を追いますか。」
「確かにな。一人にするわけにはいかんだろう。」
芍薬と牡丹が諦めたように言った。
仕方なく、その騒音の元へ向かう一行。そこでは。
「ここって、まさか例のモノがある場所?」
モナが争う2組を指差して、九曜・六曜、牡丹に尋ねる。
「違いますよ。」
六曜が答えた。問題の場所、についても易で占い済みであるが、それはここよりずっと北の方である。尤も、そこに『あるもの』があるかは分からないが。ただ、そこにキーになる何か、があるのだ。
「じゃあ、なんであの人たちケンカしてるんだろ。」
良く見ると争っているのは、錬金薬師アーサー・魔法使いマーリン組と、魔法剣士アラン・僧侶マリー組である。
「…。アーサーとアランって仲悪かったよね。」
「そう言えばそうじゃったな。」
リザと九曜が呆れ顔で4人を見詰める。
「…ここはもう良いですね。」
「待て芍薬、一人で行くな。」
芍薬はただのケンカと判断し彼らの事は放置して先に進もうとする。その後を追う牡丹。
「待つのじゃ、二人とも、モナを置いては行けぬ。」
九曜に呼び止められ、仕方無く立ち止まる2人。
「モナ、行こう。」
「止めなくて良いの?」
「まあ、いつものケンカかと思われるので。」
六曜の説明に釈然としていない様子のモナだったが、リザも呼んでいるし、と、踵を返す。
すると、
「ああ、ちょうど良いところに。あなた方、この2人のケンカ止めていただけません?」
さらり、と、面倒事を頼まれた。頼んできたのは、僧侶のマリーである。
「…お主が止めれば良かろう?」
「先程から、わたくしとマーリンとで試みておりますが、この調子でかれこれ1時間。」
1時間もこの調子? リザは呆れたように呟いた。九曜は溜め息を、六曜は苦笑をしていた。
「…仲が良いですね。」
興味無さそうに、芍薬が言った。
「いやだわ、ええと、芍薬さん?」
「そうだよ、芍薬、仲良いのにケンカなんかしないじゃん?」
「大和には、喧嘩するほど仲が良い、と言う言葉があるのでな。」
芍薬の代わりに、牡丹がマリーとモナに説明する。
「それで、結局ケンカの原因て何ですか?」
止めるにしても理由が分からないと、と、六曜が訊く。
「…さあ?」
マリーが首を傾げた。
「…。われらには如何とも出来ぬが。」
原因も分からないようではな、と、呆れ顔で九曜が言う。
「ああ、足止めして申し訳無かったです。あの2人はいつもああなんです。」
マリーとのやり取りに、マーリンが入ってきた。そして、
「そのうち疲れて止めると思いますので、皆さんは先に進んでください。」
と、続ける。
「止めなくて良いんですか?」
「まあ、進級がかかってますしね。巻き込むわけには。」
さすがに気になったリザが問うと、穏やかな笑みのマーリンが答えた。
「…。巻き込めばよかったのに。」
笑顔でぼそりとマリーが言った。
「…聞こえましたが。」
「あらやだ、気になさらないで?」
「…。黒いな。」
芍薬と牡丹が、マリーに警戒心丸出しの視線を送る。
「ねぇねぇ、どうしてケンカしてるの? 仲が良いんでしょう?」
「「「「「「「 ?! 」」」」」」」
しまった、放置しすぎた、と後悔したが既にモナはケンカ中の2人に声をかけた後だった。
「…。彼女の監視役を決めた方が良さそうですね。」
遠い目で芍薬が言った。
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