序 モナ・リザ参上?

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序 モナ・リザ参上?

「偉大なる魔法使い、アレイスター・クロウリーの生まれ変わり! 魔法使いモナ! そして… 錬金術師リザ! ただ今参上!!」 「…なんて? 何の生まれ変わり? 初耳なんだけど、ソレ。」 「…ここはノッてきてよ… リザ…」 「めんどい。」  中世ヨーロッパの錬金術がうっかり完成し、まかり間違って魔術(白・黒両方)まで大成してしまったアナザーワールド。in南欧辺り。  歴史はその後 、まさかのファンタジー展開に。当然、国境も国名も、歴史的事件も偉人も、こちら側の世界とは別方向に展開しているパラレルワールドの地球である。 …で。  ここは、こっちの世界で言うところのイタリア辺り。バチカン(こちらのバチカン市国とは別物、かなーり広い)の中にある魔法学園。魔法学園とは言うものの、魔法以外にも錬金術やら仙術やらもカリキュラムに入っている、術師系エリート育成専門の学園だ。  こちらの世界では、その辺の能力が高いほど、重用される訳だが、その中でも魔法学園は屈指のエリート校と名高い。  その魔法学園と言えば、現在学年末の進級試験真ッ最中。7日間をかけて行われるそれは、前半3日で知識と教養を試される記述式試験を、後半4日かけて行われる2人1組で参加する実技試験となっている。  記述式試験はあくまでも副次的なものであって、評価は実技試験の結果を元に下されるのだった。  その実技試験、学園の広大な敷地に教師たちにより亜空間と繋げられた特殊フィールドで行われるのが恒例となっている。サバイバル能力(3泊4日ぶっ続けで試験)、採集能力、探索、実戦等が評価の対象となる。  そして、現在実技試験開始直後。フィールドのそれぞれの地点よりスタートしたばかり。 「めんどいとか言ってないで、キメのポーズも練習しとかなきゃ!」 「…なんで?」 「…。なんで? じゃなーい? 他の生徒とエンカウントしたら出会い頭で名乗るんだってば!」 この、先ほどからテンション高い熱血な少女は、魔法使いのモナ。13才。黒いスカート(パニエもばっちり)、白いブラウスに黒のボレロ、頭にはいかにもな黒い帽子。手には樫の木で作った杖。いかにもなスタイルで固めた彼女は、やや中二が入っておる。 「…カッコ悪い。」 そしてモナのパートナーであるリザ13才。万年低血圧の錬金術師である。こちらは、一転して実用的なスタイル。ロングブーツにショートパンツ、シャツと言う出で立ち。あとは、錬金素材が小分けされている筒を装備。左腕には錬金をするための簡易システムが組み込まれた籠手を装備している。 「うっ、でも相手ビビるかもじゃん。技術点取れるっしょ!」 「…セコい、めんどい、セコい。」 「2回も言った?」 「セコい。」 「くぅっ…」 「取り敢えず、先に進もう。」 やたらと妙なことに拘るモナに、リザはそう言うと歩き出した。  そもそも、こんなスタート地点でぐだぐだしている暇はないのである。試験は既に始まっている。これから、終了時まで必要とされるであろう錬金素材から食料まで自力で採集。野営の準備も2人だけで行う。そうしながら、ある場所に隠された「あるもの」を見つけ出し、試験の終了まで保持しなくてはいけない。  「ある場所」も「あるもの」、も知らされていないので、自分達でそれを探さなくてはならないし、「あるもの」は1つしかない。それを受験者同士で奪い合うのだ。リザには到底モナの戯れ言に付き合う余裕は無いように思えていた。  モナとリザのスタート地点は、一言で言うなれば森である。どちらかと言うと寒い地方の森、のようだとリザは判断するが、生っている果物を見るとどうにも違うような感じもする。寒冷地方だけでなく亜熱帯の植物も生えている。 「先生もテキトーだなぁ…」 リザは溜め息を吐いた。 「リザ、リザっ、見てこれ~、見て!」 さっきまで隣にいたはずのモナの声が後ろから聞こえる。なんとなく嫌な予感がしつつも、リザは振り向いた。 「これ、すごく美味しいよ!」 果物を頬張りながらモナが言う。そうして、もう片方の手でリザに果物を差し出している。 「…置いてっていい?」 一言だけ言って、リザはくるりと向きを変え、歩き出した。なんで、私あんなのと組んじゃったんだろ? 試験前を思い浮かべて、そう言えばあの子の乗りと勢いに押しきられたんだったな、と思い至ったので考えるのを止めた。 「あっ、リザ待って! 試験は2人一緒じゃないと失格になっちゃうよ~!」 リザが興味を示さないと分かると、モナは慌てて後を追った。  それから。 あてどもなく散策し、 食事も済ませた昼下がり。相変わらずのテンションで1人話し続けるモナに、逆に尊敬の念をリザが抱き始めた頃。  それ、は、やって来た。     
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