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 この町は新日鉄で栄えてきた町であった。  「すみません。もうしません。」  「ええからちょっと免許証見せ。」  洋介が免許証を見せると、大男はそれを取り上げた。  「(大変だ。土下座の出番だ。)申し訳ありません!」  土下座が決まった。  しかし何とも恰好の悪い土下座だ。完全に土下座の美学に反する。  しかし、ここは大男の許しを得るためにはこれしかない。最終兵器の登場だ。  その後、大男は洋介に罵詈雑言を浴びせた後、  「あんたなんか免許証預かる値打ちもないわ。」  と言って、免許証は無事洋介の元へ帰ってきた。    本当はこれで終わるはずだった。  ところが、当時の洋介は余りにも世間知らずでお人好しであった。  「私は大変な方を怒らせてしまった。もう合気道部の生徒が怪我をしてもここへ連れて来られないではないか。」  そう思った。  そこで洋介は上等のブランデーを買い、謝罪に行ったが、受け取りは拒否された。  「これは全生徒の前で土下座をして謝ろう。」  そう思った。             3章・生徒の前ではい土下座    そして翌日の授業であった。  「生徒の皆様。誠に申し訳ありませんが、教科書の52ページを開いて頂けませんでしょうか?勿論、嫌なら結構であります。わたくしとしては、教科書を開いて頂くと助かるのですが---。」  生徒が一斉にざわつき始める。  「おい、今日どないしたんや?大山。おかしなったんとちゃうか?」  「これ完全に行ってもとるで。」  そんな声が聞こえる。  「唐の国というのは、律令制・租庸調制・府兵制の三本柱でできているのでありまして、これはすなわち、鼎のようなものでありまして、一本でも崩れると後はみんな倒れる仕組みであったのでございます。あのー。お分かり頂けたでしょうか?  今日は、この三本の足が一本一本取れていくという話でございます。」  「先生、租庸調の庸の字が間違っています。」  (よし、今だ!土下座のチャンスだ!)  「あ!しまった。皆様、誠に申し訳ございません。」
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