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そうこうしているうちに一時限目の授業が終わった。
二時限目の授業に行く。
もう噂は伝わっていた。
教卓にはタヌキの絵が数枚置かれていた。黒板にもタヌキの絵が描かれている。
生徒が一斉にはやし立てた。
「タヌキ。タヌキ。タヌキ。」
お調子者の女生徒の一人が言った。
「先生、授業やって。それからタヌキの真似して。」
「そうでございますか。私め、そんな立派な授業はできませんが、では授業を進めさせて頂きます。その前に、皆さんが着席して頂けない状態ではいささか授業がやりにくう御座います。どうぞ着席して下さいませ。」
そこは進学校なのか、全員が着席した。
「誠にあいすみませんが、このおタヌキ様の絵、大変可愛らしいので、頂いて帰ってよろしいでしょうか?」
その時、かの女生徒が言った。
「先生、持って帰って。それからタヌキの真似して。」
「もう恥ずかしいから嫌です。」
そこへ女生徒から大合唱が起こった。
「先生、タヌキの真似。タヌキ。タヌキ。タヌキ。」
「うるさいわ!」
洋介は後は淡々と授業を進めた。
この頃、既に管理職から精神病院へ連絡が行っているとも知らずに---。
そして、ショートホームルームの時間になった。
洋介は担任を持っていなかったが、学年付きの副担任であった。従って、学年の教師が休んだら代わりにホームルームへ行かなければならなかった。
たまたま、「四つん這い」のクラスの担任が休んでいた。
そこで洋介はホームルームへ出かける。
そして、プリントを手渡す時に「田中様」と言ったので生徒が一斉に笑いだした。
そして、その日の放課後、洋介は教頭に呼ばれた。
「大山先生、しんどかったら休んでもええんよ。」
「いえ、大丈夫です。」
次に洋介と同じ大学出身の児島先生が声をかけた。
「ちょっと、帰りにファミレスでも寄らへんか?」
「はい。いいですよ。」
そして、案の定、児島先生が切り出した。
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