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美島京子
十二時を回った2-1の教室。
生徒会役員、美島京子の訪問にクラスメイトがざわめいた。
美島京子はいわゆる『高嶺の花』である。
そんな彼女の交際相手が『平凡な男子高校生代表』のこの俺であることに皆は頭を抱えていた。
京子は教室をキョロキョロと見渡し、こちらを確認する。
彼女は自分からクラスに入ることはせず俺に手招きをした。
俺は弁当を持つと京子の方へ向かう。
日課ではないが、お互いの都合が合うときは学校の中庭で共にお昼を過ごす。
『都合が合う』と言っても、ほとんど京子の都合だ。
京子は生徒会に所属している。それ以外にも先生の手伝いや、後輩の悩み相談。俺には到底理解できないが、色々なものに首を突っ込んでいるため、年中暇な俺が彼女の都合に合わせているのだ。
中庭に着くと、木陰のベンチに腰を下ろす。
「京子の腕細いなぁ、最近げっそりしてきたんじゃないのか?」
「ほんと? ちょっとダイエットしすぎたかも」
さらさらの黒髪をかきあげながら、彼女は活気のない笑顔を見せた。
普段から明朗快活というわけでもないが、それにしてもである。
疲れているのか。
「ダイエット? 体重とか気にしなくていいと思うけどなぁ」
俺は弁当の唐揚げを口に運ぶ。
美味い。
「そういう定めなのよ……女の子って」
京子はプチトマトを口に含むと俺の最後の唐揚げを見つめた。
「食べるか?」
そういって唐揚げを差し出すと、京子は色素の薄い肌を赤くした。
無意識だったのだろう。よく顔に出る子である。
「っ…はんぶん、半分下さっ」
言い終わる前に唐揚げを全て、京子の口に詰め込んだ。
「美味しいです…」
京子は少し驚いたようだが、しっかり完食した。
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