210人が本棚に入れています
本棚に追加
私が長考に入っていたのは、アスターの怪訝な声でかき消された。それに私は慌てて謝る。
「ごめんなさい……ちょっと考えていて」
「そっ。で、あの美人さん、まだしゃべれるみたいだけれど。どうする? 今だったら触手にさえ気を付ければ、やれるけど?」
「っ、あの子に助けるって言ったんです! 攻撃なんて駄目ですからね!?」
「冗談よ、冗談。で、できそうなの? 祓うのは」
私は母親人魚のほうをじっと見る。
彼女はまだ、理性が残っている。完全に穢れに取り込まれてしまったら、もう祓うことができないって言っていたけれど、彼女はまだ間に合う。
もし、私がリナリアからもらった象徴の力【幻想の具現化】が本来の力を使えたら……助けることができる?
私は彼女をじっと見ながら、頭の中で思い浮かべる。思い浮かべたのは、彼女の記憶の場所。何度も何度も行こうとしたけれど、あそこに行くことができなかった。でも……今だったら行けそうな気がする。ううん、行かないと駄目だ。
ふいに、頭の中に色とりどりの花が、匂いまで嗅ぎ取れそうなほどに、はっきりと再現できた。
サーモンピンク、オレンジ、ピンク、紫……そして、淡い緑の茎……。
****
「来られた……」
最初のコメントを投稿しよう!