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ゲームキャラだとわかってはいるものの、どうしてもリナリアが私と同い年には思えない。それは顔面偏差値が一般人の私とゲームの主人公だったら全然違うっていうのもあるけれど、やっぱり神殿にずっといるせいか彼女からは妙にありがたい雰囲気が漂っているっていうのがあるのがひとつ、姫の風格っていうのか一般庶民とは明らかにオーラが違うっていうのがひとつ。
自然と敬語でしゃべってしまう私に、リナリアはくつりと笑って、手を広げた。彼女が手からふんわりと出したのは、リナリアの花……彼女と同じ名前の花だ。
「あなたは私やシンポリズムのことをずっと観測していたでしょう? うううん、あなただけではないですね。何人も、何百人も、何千人も。私たちの世界を観測していたでしょう? たしか、ゲエム……というもので」
「……あ」
それに思わず唖然とする。
シンポリズムっていうのは、「円環のリナリア」の舞台の世界の名前だ。言葉が全ての世界であり、この世界で生きている人たちは全員自分の名前に当てはめられた【象徴の力】っていう魔法の力を持ち、それを使って生活を営んでいる。
深淵を覗いている者もまた深淵を覗かれているとはいうけれど、まさかゲームしているのを知られているなんていうのは、妙に恥ずかしい気がする。だってこのゲームのジャンルは乙女ゲーム。当然恋愛イベントも存在するし、いわば人の恋愛を出葉亀していたというわけだから……。
「ご、ごめんなさい……っ! 普通に楽しい恋愛ゲームだと思って、覗いているなんてつもりは本当になくって……!!」
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