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偽りの巫女と放蕩貴族の密談
私はアスターのそのひと言に、どう返事をするのが正解なのか、わからずにいた。
わざわざ耳栓外して密談したいって、どういうことなの。
「……私は、神殿に仕える巫女です」
「リナリアちゃんは神殿からの命令で俺を連れ戻しに来たから知ってると思うけど、うちの実家は神殿にも相当寄付金出してる家系なのよねー」
そう言いながら、アスターはエメラルドグリーンの瞳でじっとこちらを見下ろしてくる。口元は笑っているけれど、目はなにかを見定めているようだ。
「だから神殿のことについてはいろいろ詳しいんだよ……田舎の支部だったらともかく、神殿って後継者争いに巻き込まれそうなご子息ご息女の逃げ込み場所なのよね。もし実家になにかあったらいつでも還俗できるようになってる」
「……それで?」
「うーん、リナリアちゃんも理屈で言うんだったら、貴族出身のはずなのに、それらしさが抜けてるような気がしてさ。なんでだろうって思ったんだよ」
そ・こ・かぁ……!
元々私が記憶喪失って設定を通しているのは、アルとクレマチス、スターチスだけだ。アスターとカルミアには、そもそもその設定を教えてはいない。
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